螺旋 【第四話】







 川底の石に躓き、倒れ込む身体を両の腕で支えた。ひんやりとした川の水が凛の下肢を撫でていく。水の中にある
脚に視線を落とす。乱造に縛り上げられた痕が赤黒い痣を作っていた。犯された記憶を振り払うように、頭を振って立
ち上がり、再び走り出す。
 木々の合間に凛を追う影があることに気付く事は無かった。



 黒屋から逃げ出し、息つく間も無く走り続け葉隠れの里に辿り着いた。彩女から託された密書を早々に届けたかっ
たが、乱造に汚された着物を着たままなのはどうしても我慢が出来なかった。かつて暮らしていた家屋に足を踏み入
れる。しんと静まり返り、室内の空気はひんやりとしていた。手早く着替えの忍装束に袖を通す。
 着替えを終え、ようやく一息ついた。住み慣れた部屋を見回し、障子を開けた。平穏に暮らしていた頃の記憶が凛
の脳裏を過ぎる。俯いて溜息をついた。
「随分のんびりしてるじゃないか…」
 聞き覚えのある声に、はっとして顔を上げ身構える。
「単葉…」
 開け放した障子の向こうに、月明かりの中佇む単葉の姿があった。凛は唇を噛んだ。尾行られている事に気付かな
かった自分の未熟さが腹立たしかった。単葉が近づいてくる気配を察し後ずさる。単葉の視線が凛の膝の周囲に残
る痣を捉える。
「乱造相手に随分良い声で鳴いてたな…」
 単葉の言葉に息を呑んだ。なおも近づく単葉から後ずさるが、逃れようとする背中を板張りの壁が遮る。追い詰めら
れ、単葉が壁に手を付いた。
「良かったか…?」
 問いかけられ、単葉の息が首筋にかかる。俯いたまま弱々しく首を横に振る凛の、細い髪がサラサラと音を立て
た。単葉の手が凛の顎を掴み顔を上げさせる。
「嘘つけ…乱造に犯られて感じてた癖に…」
 凛の身体を壁に押し付け、脚の間に強引に膝を割り込ませていく。身体を寄せる単葉の胸に凛の掌が触れた。布
越しに肌の温もりが伝わってくる。
「抵抗しないのか…」
 凛の唇に単葉のそれが軽く触れた。押し返そうとしない凛の手首を掴み、自身の肩に回してやる。凛の手が躊躇
いがちに単葉の肩にしがみついてくる。それが合図かのように単葉の腕が凛の腰を引き寄せる。
「単葉…っ…」
「黙ってろ…」
 凛の身体をきつく抱き締め、貪る様に唇を重ねていく。舌を絡めあう濡れた音と、息遣いが静かな室内に響く。凛の
背をなぞる手が着物の中に滑り込み、柔らかな肌に直に触れる。胸に巻かれたサラシが解かれ、衣擦れの音を立て
て畳の上に落ちた。しっとりと吸い付くような肌の感触に、単葉の下肢が徐々に熱を帯びてくる。
 唾液の糸を引き唇が離れた。単葉に支えられようやく立っている凛を畳の上に乱暴に押し倒す。下肢に纏う着衣を
強引に引き剥がした。
「どうせ…もう濡れてるんだろう…?」
 背を向け逃れようとする凛の肩を掴み押さえつけ、片足を持ち上げ花芯を露にする。凛が一瞬身体を強張らせ、潤
んだ眼が単葉に向けられる。
「指で広げてみろ…」

                                    

 単葉から視線を逸らし唇を噛んだ。凛の手がゆるゆると下肢に伸び、指先で花弁のようなそれを広げてみせる。花
芯がねだるように蠢き、愛液が今にも溢れそうな程に濡れていた。単葉が袴をはだけ、いきり立った肉棒を露にす
る。先端を凛の花芯にあてがい、根元まで一気に突き入れた。
「ひっ…!!…っ…あ…っ…あぁっ…!!!」
 花芯は難無く単葉を受け入れ、柔らかな肉壁がきつく締め上げてくる。凛の唇から漏れる声が痛みによるものでな
いのは明らかだった。突き上げる度、愛液の溢れる濡れた音と、凛の唇から漏れる喘ぎ声が一際大きくなる。
「ふん…良い声出すじゃないか…乱造に犯られて…すっかり女になったか…?」
「ち…がう…」
 単葉に問いかけられ、唇を震わせ搾り出すように呟いた。
「何が違う…?それとも…縛られるのが好みだったか…」
 嘲る様に笑い、脚を持ち上げる手に力を込める。膝の周囲に残る痣に舌を這わせた。
「んあっ…!!…ぁっ…ちが…っ…違う…っ!ひ…単葉が──────…」
 凛の発した言葉に動きを止める。
「俺が…何だ…?言えよ…」
 単葉の冷たい視線が絡みついてくる。視線を逸らし観念したように凛の唇が動く。
「あの時…単葉にされた事思い出したら…そしたら…どうしようもなくなって…」
 凛の言葉が一瞬理解できなかった。次の瞬間笑いがこみ上げてきた。
「乱造に犯られてる間…俺に犯された時の事考えてたのか…?」
 顔を背け、唇を震わせる凛を見下ろす。深く押し込んだ肉棒を一気に引き抜いた。凛の唇から悲鳴に近い喘ぎ声が
漏れた。
「これが…欲しかったのか…?」
 愛液にまみれ、ぬらぬらと光る肉棒が薄暗がりに浮かび上がる。溢れた愛液が凛の太股を濡らす。脇腹を辿り這
い上がってきた単葉の手が、凛の乳房を弄び始める。指先が薄桃色の突起をきつく挟み込む。
「あ…っ…あぁ…っ!!…乱暴に…しないで…」
「…ふん…感じてる癖に…」
 再び肉棒を押し込もうと凛の脚を開かせる。
「ふ…双葉に──────…!」
 凛が口にした名前に単葉の動きが止まる。冷たい視線が凛に絡む。
「双葉の代わりなら…それで…良いから…。もっと…優しくして…。双葉にするみたいに──────…!」
 髪をつかまれ、痛みに顔を顰めた。
「黙れ…」
「双葉になら…こんな…乱暴にしないんでしょう…!?だったら──────…!!!」
「黙れと言ってるだろう…」
 凛の腰を持ち上げ、獣の姿勢をとらせる。背後から強引に肉棒をねじ込んだ。
「あ…っ…ぅ…!!っ…や…っ…こんな…っ…ぁ…あぁ…っ!!!」
「無駄口利かないで…そうやって喘いでれば良いんだよ…凛…お前はな…!!」
 凛の眼から涙が零れる。畳に爪を立てる乾いた音がした。単葉が肉棒を抜き差しする度に愛液が溢れ、凛の下肢
にじわじわと快感が広がっていく。
「言っただろう…お前じゃ代わりにならないって…な…」
 凛の喘ぎ声に単葉自身も張り詰めた感覚を覚え始める。激しく腰を打ちつけ、凛の奥深くを突いた。
 単葉に慣らされた凛の身体は肉棒の変化を敏感に感じ取る。
「いい…よ…単葉…。きて──────…」



「──────…凛…っ…」
 肉壁にきつく締め付けられ、堪えきれずに果てた。濃い精液が凛の奥に注ぎ込まれる。ヒクヒクと収縮する凛の内
側は最後の一滴まで搾り取ろうと単葉のモノを締め付ける。ゆっくり肉棒を引き抜き、凛の腰を持ち上げていた手を離
す。支えを失った凛の身体が畳の上に横たわり、秘裂から精液が滴り落ちた。
 畳の冷たい感触が、凛の火照った身体を徐々に覚ましていく。はだけた着物を肩まで引き上げ、解かれて床に落ち
たサラシを取ろうと手を伸ばす。腕をつかまれた。怯えた様に単葉を振り返る。
「誰が終いだと言った…?」
 冷たい笑みを浮かべ凛の身体を引き戻す。腕をつかまれる痛みに凛の表情が歪む。
「…っ…!もぉ…いいでしょう…!?…こんな事…っ…!!」
「さっさと済ませたいなら…俺を満足させれば良いだけの話だ…」
 髪をつかみ頭を押さえつけ、凛の顔の前に肉棒をつきつける。
「しゃぶれよ…これが好きなんだろう…?」
「いや…」
 柔らかな唇に、肉棒の先端が触れた。解き放ったばかりのソレは雄の匂いを漂わせ鼻孔を刺激する。単葉の精液
を滴らせる凛の花芯が疼いた。
 唇を開き舌の上に肉棒を迎え入れる。単葉の下腹部で凛の頭が上下する。ぎこちなく動く舌が肉棒に絡みつき、濡
れた音を立てる。
「歯が当たってる…もっと巧くやれ…」
 股間に顔を埋め、奉仕する凛を眺める。身体をずらして凛の下肢に手を伸ばす。単葉の動きに気付き凛の舌が動き
を止める。
「続けろ…」
 着物をまくり上げ、凛の汗ばむ肌をなぞる。背筋を辿り、柔らかな尻をなぞる。内腿に指を這わせると、凛の体が小
刻みに震え、肉棒を這い回る舌の動きが鈍る。単葉の指が徐々に這い上がり、凛の核心に触れ肉芽を指の腹でこ
ねる。
「んっ…はぁっ…!!!」
 唾液の糸を引き唇が肉棒から離れた。愛液の滴る花芯に中指を挿入する。肉壁を擦る様に抜き差ししてやると凛
が尻を震わせる。
「ひっ…単葉…っ…!これ…これが…いいっ…」
 硬く膨らんだ肉棒を掌で包み、耐え兼ねた様にねだる。
「これで…して…」
 潤んだ眼が単葉に向けられる。凛の腕をつかみ、引き起こす。
「ソレが欲しいのか…?」
 凛が小さく頷いた。単葉が含み笑いを漏らす。
「だったら自分で入れてみろ」



 単葉の言葉に頬を赤らめ唇を噛む。視線を逸らす凛の下肢に手を伸ばし、溢れる愛液を指先で絡め取り花芯をなぞ
る。
「あっ…!!くぅ…っ…!!!」
 弄ばれ敏感になった箇所は、既に指では満足できない程に熱くなっていた。身体を震わせ単葉にしがみつく。
「欲しいんだろう…?乗れよ…」
 凛の耳元で呟き、畳の上に身体を横たえる。ゆっくりとした動きで凛が単葉の上に跨る。指で花弁を広げ、そそり立
つ肉棒を迎え入れるよう導く。愛液の溢れる花芯に肉棒の先端が触れた。単葉の手が凛の腰に添えられる。花芯が
ゆっくりと肉棒を呑み込んでいく。
「ん…っ…」
 根元まで深く繋がり合うと凛の唇から吐息が漏れた。腰に添えられていた単葉の手が凛の太股を撫でる。繋がり
合った箇所を隠すように寄せた膝が震えた。
「開けよ…俺のモノ…銜え込んだそこ…もっとよく見せろ…。」
 単葉の手が凛の膝を大きく開かせる。薄い茂みの下に肉棒を銜え込む秘裂が覗く。
「いっ…いや…っ…見ないで…」
 隠そうとする凛の手首を単葉がつかむ。唇を噛み単葉から視線を逸らす。凛の頬が羞恥に赤くなる。花芯がヒクヒク
と蠢いて単葉のモノを締め付けていた。
「見られて…感じてるのか…?」
 含み笑いを漏らし問いかける単葉の言葉を、弱々しく首を振り否定する。柔らかな内腿を単葉の指がなぞる。下肢
に注がれる視線に再び花芯が疼いた。
「入れてるだけじゃ…物足りないだろ…?…動け…」
 単葉に言われるまま僅かに腰を浮かせる。あられもなく開いた秘裂から愛液にまみれた肉棒が半分ほど露にな
り、再び腰を沈めると花芯を押し広げ凛の中に呑み込まれていく。熱く膨らんだ肉棒の感触に凛が吐息を漏らす。
「あ…っ…溢れちゃう…っ…!」
 唇を震わせ腰をくねらせる。抜き差しされる肉棒を伝って愛液が単葉の上に滴り落ちる。
「お前の下にいると汚れるな…」
 上体を起こし凛の腰に腕を回す。かろうじて羽織っていた凛の着物を脱がせ、畳の上に押し倒した。全裸の凛は意
外なほど華奢だった。肩に残る双葉の矢で射られたであろう傷跡は血が乾きかけていた。
 乱造に犯されていた凛の姿が脳裏に浮かび、単葉の中の欲望が更に熱を帯びる。小振りな凛の乳房を揉みながら
薄桃色の突起を口に含み舌先で転がす。凛の手がおずおずと単葉の肩に触れる。胸元を這い回っていた唇が鎖骨
を辿り首筋に舌を這わせる。単葉の手が凛の髪に触れた。髪をつかまれる…そう思い凛が身体を強張らせた。単葉
の手が凛の髪を優しく撫でた。
「単葉…」
 予想していなかった単葉の行為に驚いた。首筋を這い回っていた唇が凛の頬に触れる。
「黙ってろ…」
 単葉の唇が凛のそれを塞ぐ。舌を絡めると凛の小さな舌が応えるように絡み付いてくる。
「ん…っ…ぅん…っ…!」
 くぐもった声を漏らし、単葉の肩にきつく爪を立てる。凛の身体がビクビクと痙攣する。達していた。単葉の唇が離
れ、唾液に濡れた凛の唇が微かに動く。
「…もぉ…許し…っ…!…んっ…んあっ!!あっ…あぁ…っ…!!!」
 肉棒がゆっくりと、深く凛の内側をかき混ぜる。
「許して欲しいなら…満足させろ…」
 単葉が動く度、凛の中から濡れた音を立てて愛液が溢れる。花芯に締め付けられる肉棒が一際大きく膨らむ。凛
の奥深くに押し込み、熱い精液を残らず注ぎ込んだ。
 凛の首筋に顔を埋め、荒くなる呼吸を整える。肩にしがみついていた凛の手が単葉の頬を撫でた。凛の潤んだ眼と
視線が絡む。
「もう────…」
 言いかけた凛の唇を単葉が塞ぐ。
「何度言わせる…黙ってろ…」
 解き放ち硬さを失いつつある肉棒は、名残を惜しむように未だ凛と繋がり合っていた。凛の温もりが心地良かった。
凛の細い腕が単葉にしがみついてくる。花芯が収縮し、単葉の萎えた肉棒を押し出した。


 横たわりまどろむ凛に脱がせた着物をかけ、細い髪を優しく撫でてやる。

 『双葉の代わりなら…それで…良いから…。』

 凛の言葉を思い出し自嘲気味に嗤う。
「だから…お前はガキだっていうんだ…」