初恋





「う…ん…」

 今にも尽きそうな蝋燭の灯りが揺らめいていた。慣れない畳の上に寝かされていた所為か、身体のあちこちが鈍く痛んだ。起き上がり頬に掛かる長い髪を小さな白い手がかき上げる。暗がりに目が慣れてくると、そこが座敷牢のような所だという事に気が付いた。薄暗い牢の中をぐるりと見回しながら考えを巡らせた。意識を失う前の記憶がおぼろげながら蘇る。


 嫁いだばかりの尼飼の城が得体の知れない忍衆によって襲撃され、自分を護ろうとする家臣が次々と断末魔の悲鳴を上げ、斬られていった。

『姫を─────郷田の姫を捕らえよ』
 首領らしい男が配下の忍に命ずる声が聞こえた。城に火が放たれたのか室内に煙が充満し始める。むせながらも障子を開け、屋外へと逃げ出した。未だ背後に追っ手の気配は無いが、捕らえられるのも時間の問題であった。
「彩女おねぇちゃん…」
 心細げな声で呟く。中庭に敷き詰められた砂利が僅かに音を立てた。近づいてくる足音に顔を上げ、暗闇に目を凝らす。おぼろげに浮かび上がった人影が微かに含み笑いを漏らす。
「見つけたぞ…郷田の姫──────」
 勢いを増した火の手が声の主を照らし出す。長い黒髪と菊姫を捉える紅い双眸。見覚えのある姿に、その名を口にしようとした。──────…そこで記憶が途切れた。

◆◆◆


 こうして捕らえられるのは何度目だろうか。そのたびに力丸と彩女が必ず助けに来てくれた。今回もきっと…と信じて不安な気持ちを押し殺していた。牢内の空気が僅かに動き蝋燭の炎を揺らす。牢の扉が重く軋んだ音を立ててゆっくりと開く。ぽっかりと開いた格子の先に暗闇が続く。格子に囲まれているよりは幾分かはましだ…そう思い、周囲を伺いながら牢の外へ出た。暗闇に目を凝らし周囲を見回す。
「誰か…居るの…?」
 力丸と彩女ならば真っ先に菊の名を呼び安心させてくれる筈だ。それとは違う何かが近くに居る。
「ふふ…久しいな…郷田の姫…」
 背後から聞き覚えのある声で名を呼ばれ振り返った。先刻意識を失う前に目にした姿がそこにあった。
「鬼…陰…」
 敵とはいえ知らない顔ではなかった事に多少の安堵を覚えた。その上鬼陰は力丸と彩女の前に二度失脚している。菊の黒目がちな大きな瞳が鬼陰を見据える。
「またこんな事して…。悪い事たくらんでるんでしょう。力丸と彩女おねぇちゃんにやっつけられちゃうからぁ。」
 頬を膨らまし、舌足らずな口調で言い放つ菊の前に、鬼陰がゆっくりと近づき膝をつく。
「ふ…あの時泣いてばかりいた小娘が随分な口を叩くようになったものだ…」
 菊の長い髪に鬼陰の手が伸びる。青白い指先が黒い髪を絡め取り弄ぶ。

「こっ…小娘じゃないもん…っ…!もぉお嫁にだって…」
 髪が引かれる感触に言葉が途切れた。指先に絡めた髪に鬼陰がくちづける。視線が絡む。菊の頬が赤らむのを見て鬼陰の口元が僅かに上がる。
「ふ…その様子ではまだこれも知らぬか…?」
 菊の身体を引き寄せるのにさして力はいらなかった。
「ん…っ…んぅ…っ…!くるし…い…っ…!」
 何をされるのか判らないうちに、冷たい唇が菊のそれを塞ぐ。細い腕が鬼陰を押し退けようと精一杯の力を込める。
「嫌ならば…この舌…喰い千切っても良いのだぞ…?」
 低い声で呟き、息の出来ない苦しさから開いた唇にざらりとした舌を差し入れる。舌先で菊の小さな歯列をなぞる。顔を背け逃れようとする小さな顎をつかみ、より深く舌を滑り込ませる。徐々に菊の身体から力が抜け、床に膝をつく。口中に注ぎ込まれる唾液を飲み干す小さな音が鬼陰の耳に届いた。
 解放された唇から吐息が漏れた。菊の虚ろな視線がぼんやりと鬼陰を捉える。唾液に濡れた菊の唇を鬼陰の指がなぞる。僅かに開いた唇の奥に、小さな歯列と舌が覗いていた。
「その…可愛い舌を吸わせてくれぬか…?姫…」
 鬼陰の言葉に、素直に唇を開き舌を差し出す。薄明かりに照らし出された舌先が、誘うようにぬらぬらと光る。
 再び菊の唇を塞ぐ。小さな舌を貪るように濡れた音を立てて吸う。鬼陰を押し退けようとする腕から力が抜け、だらりと床に落ちる。
 帯が解かれる音がした。身体を締め付ける感触が失せ、まとっていた着物が小さな肩からするりと落ちた。白い肌着姿が露になる。肌着の上から鬼陰の手が身体を撫で回す。
「な…に…?くすぐったい…」
「助けが来るのを只待つのは…退屈であろう…?」
 菊の耳元に唇を寄せ呟くと、抵抗する暇も与えず床の上に押し倒す。肌着の帯を解き薄布をはだけると幼い身体が露になる。薄明かりの中、僅かな胸の膨らみが仄かな影を作る。鬼陰の唇が胸元を這い回り、小さな乳首を舌先で刺激する。
「ふぁ…っ…!」
 菊の反応を楽しむように舌を這わせ、濡れた音を立てて吸う。時折きつく吸い上げては白い肌に赤い痕を刻む。
「や…っ…ぁ…!!鬼陰…っ…くすぐったくて…変な感じ…するぅ…っ…」
「ふ…ん…姫のお目付け役は…力丸はこのような事教えてはくれぬのか…?」
 ねっとりと唾液に濡れた乳首から唇を離し問い掛ける。菊が小さく頷いた。下肢へと伸びる鬼陰の手に気付き、身体を強張らせぴったりと膝をあわせる。
「産毛と変わらぬな…」
 秘部を覆い隠す筈の茂みは薄く、幼い割れ目が露になっていた。鬼陰の指がそれをなぞる。


「そら…もっと脚を開かぬか…」
 菊の耳元で呟いた。寄せた膝が僅かに開く。鬼陰の指先が割れ目に滑り込む。
「あ…っ…!」
 指先が僅かに肉芽を掠める。菊の反応に鬼陰が含み笑いを漏らす。花弁のようなそれを広げ、人差し指を奥深くへと押し込もうとする。
「ふん…未だ濡れる事すら知らぬか…?」
 菊の脚を持ち上げ大きく開かせる。挿入される事を拒む秘裂を舌先で開かせ、薄桃色の肉芽を弄び花芯に浅く舌を挿入する。
「やっ…鬼陰ぇ…っ…!」
 秘部に顔を埋める鬼陰を押し退けようと伸ばした手がつかまれる。
「小娘ではないと言い張るが…生娘の味がするぞ…姫──────」
 唾液に濡れた口元を拭い顔を上げた。鬼陰の言葉に頬を赤く染め顔を背ける。
 頭をもたげ始めた肉棒を露にし、唾液に濡れた菊の秘裂に押し付ける。ゆっくりと腰を押し進め、身体を寄せていく。
「はっ…あん…っ!!」
 肉棒は未だ膨らみきってはいないものの、初めて受け入れる菊に痛みを与えるには十分な程であった。痛みから逃れようともがく小さな肩を鬼陰の手がつかむ。
「動けば痛みが増すだけだぞ…大人しく儂を受け入れよ…。」
 唾液に濡れているとはいえ幼い花芯は狭い。肉棒の先端がそれ以上の進入を拒む箇所に行き当たる。涙で潤んだ菊の目が鬼陰を捉える。
「ふふ…生娘の証か…」
 更に腰を押し進め強引にねじ込んだ。身体を引き裂かれるような痛みが菊を襲う。唇を噛み、きつく目を閉じこらえる。目尻から涙が零れた。肩をつかむ鬼陰の腕にきつく爪を立てる。
「ひ…っ!」
 肉棒が引き抜かれる痛みに思わず声が漏れる。微かに血の匂いが漂う。再び肉棒が押し込まれる。先の挿入よりも幾分か痛みは和らいでいた。繋がりあった箇所が焼けるように熱い。菊の内側で鬼陰のものが膨らみ始める。
「あ…っ」
「どうした…?」
 菊の反応に含み笑いを漏らしながら問い掛ける。
「お腹の中で…鬼陰の…膨らんで…っ…!あっ…あぁんっ…!!」
 ゆっくりと腰を前後させる。ぬるりとした感触が肉棒を舐める。
「膨らんで…?どうなっておる…?」
 菊の耳元に舌を這わせながら呟く。
「ふ…膨らんで…イボイボしたのが…っ…菊の中…グリグリするぅ…っ…」
 引き抜かれた肉棒に透明な粘液が絡む。
「ふふ…生娘が…イボ付きのマラを銜え込んで濡れておるぞ…」
 上気した菊の頬を指で撫で、恥じらいながら吐息を漏らす唇を鬼陰のそれが塞ぐ。薄く開いた唇に誘うように舌先を這わせると、小さな舌がおずおずと絡み付いてくる。鬼陰のモノが熱く脈打つ度、菊の唇が震えくぐもった吐息が漏れる。
「生娘なぞ…喰い飽きたと思うておったが…良い味だ…郷田の姫よ…」
 狭い膣を一杯に押し広げ、肉棒が抜き差しされる。

「いやぁ…っ…!そんなに…グリグリされたら…菊…っ…おかしくなっちゃうよぉ…っ…!!」
 幼い身体を気遣い、ゆっくりと腰を前後させる。それがかえって菊の奥深くを刺激する。荒くなる息遣いに混ざる切なげな喘ぎ声が鬼陰の耳に心地良く響く。
「姫──────…」
 冷たい指先が菊の髪を優しく撫でる。
「…っ…んっ…あっ…やだ…ぁ…っ…あぁ──────…っ…!!」
 息を止め、身体を硬直させる。ぴんと伸ばしたつま先が微かに震えている。それと同時に内側で鬼陰が果てた。勢いよく解き放たれる精液が、狭い膣から溢れ滴り落ちる。
「はぁ…っ…!」
 菊がゆっくりと息を吐く。鬼陰の腕をきつくつかんでいた小さな手が、するりと床に落ちる。肉棒が引き抜かれ、幼い秘裂が受け入れ切れない精液を吐き出した。

◆◆◆

「すざくさま…って呼んでた…綺麗な女の人…」
 はだけた着物を引き寄せ呟いた。菊の言葉の意味を理解するのに鬼陰はしばしの時間を要した。
「雪蛍か…」
 かつて朱雀と名乗っていた鬼陰を慕い、力丸の刃の前に倒れたくのいちであった。未だ幼い頃の菊をさらってきた折、面倒を見させたことがあったのを思い出した。
「そのような名で呼ばれた事もあったか…」
 菊の視線がまっすぐに鬼陰を見つめてくる。吸い寄せられるように柔らかな頬に触れる。小さな手が鬼陰の手に重なる。
「ホントは…鬼陰…っていうの…?」
 火照ったほほに冷たい掌の感触が心地良い。頬ずりしながら問い掛けた。
「ふ…ん…どうかな…名など意味を持たぬ…」
「じゃぁホントの名前は…?」
 菊の問いに言葉を詰まらせる。
「鬼陰でも朱雀でもない…ホントの名前…」
 鬼陰の口元が僅かに上がる。
「忘れたな…人で在った頃の名など…」
「ふぅん…」
 鬼陰の膝に小さな頭がもたれかかる。
「姫…」
 頬をなでていた手が柔らかな髪を撫でる。
「菊…」
 鬼陰の膝を枕にまどろみ始めた菊が呟いた。
「姫じゃなくて…菊…」
「──────菊…」
 鬼陰が小さく呟いた。
「うん…」
 薄く微笑み、小さな寝息を立て始める。

「…菊…」
 もう一度確かめるように口にした鬼陰の声が、寝息を立てる菊の耳に微かに届いた。