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- hush-hush - |
強張った身体からふと力が抜ける。色を失った瞳が彼を見上げる。 「勝手にしろ。そんなに言いたければ聞いてやっても良いが、それで何かが変わると思うのなら、それは間違いだ」 僅かに口を閉ざす。 「傷口を顧みてやる必要などない。血が流れると言うのなら勝手に流しておけば良い。言葉になどせずとも私はそれを知っている。それが事実だ。それをわざわざ私の耳に聞かせてやる必要もない。確かめたいのは、貴様の方だ」 「――――大尉」 「好きにしろ。私が耳を傾けてやる気になっている間に、確認を確信に変えて見せろ」 肩を抑え付けていた手のひとつが彼女の頬に触れる。 「望んだ事を後悔しておいでですか」 「後悔のない選択肢など無いよ、軍曹」 頬から首筋へ、そして胸元へと流れる彼の手を一度だけ横目で眺める。 「そしてそれすらも、私のものだ」 疲れたように笑って、目を伏せる。 仄かな火が、吐息に灯る。はだけた胸元の更にその隙間から彼が手を伸ばす。その柔らかさに触れる。途切れ途切れの過去が異質な手触りを彼に伝える。彼女の体に縦横に残る痕跡を愛おしんで彼は唇を寄せる。それが彼女に何も伝えはしないものだと分かっていても、彼女をこの手に抱く度に魅入られ、引き寄せられる。悼むのではなく、敬うのでもなく、ただ、愛おしいと。 完全に落ちてはいない衣服から彼が彼女の肩に付けた手の痕が垣間見える。それを間近に眺めて、鎖骨の窪みに口付ける。舌でなだらかな線を辿り、その終端にまた口付ける。胸に与えられる刺激と相俟って彼女が身を竦める。胸の頂の尖った先端に彼の指が伸びる。痛いほどに、それが痛みに変わらないほどに絡ませる。微かな声が彼に届く。舌先でその一方に触れてそのまま口に含む。温かく湿った感触にまた彼女は身を竦ませる。 異なった感触の事なった刺激に彼女の吐息が震える。震えは肌を伝わって微かに彼の下へも届けられる。少し苦しげに彼女は眉を寄せている。吐息はまだその身に籠る熱までを彼女の肌に完全に伝えてはいない。彼女の体の線を辿るように彼は下肢へ手を伸ばす。隙間から忍び込み、その奥に手を掛ける。一息に下着を引き下ろす。その瞬間思わず目をきつく閉ざした彼女がまた目を開く。もの問いたげに彼を見る。 「――――何か?」 彼女の眼差しを受けて彼は尋ねる。何事か言おうとして、結局言いあぐねて口を噤む彼女に向かって、笑う。彼女の奥に指を差し入れて、難なく飲み込まれるのにまた笑う。 「もう、十分なように見受けられますが――――?」 膝に手を掛けて、足の間に身を割り込ませる。彼の先端が彼女の奥に当たる。 「嫌」 咄嗟に零れた言葉を手で押さえようとするが間に合わない。 「どうして?」 わざとらしく彼は問い掛ける。当たり前のように彼女から答えは返ってこない。 「どちらにせよもう止める事は出来ませんよ――――」 そのまま彼女の中へ押し入る。微かな抵抗を返しはしたものの彼女は彼を受け入れる。短く上がった声が尾を引いて消える。荒く付く吐息の合間にも声が漏れる。それに沿うように内壁が収縮して彼を取り巻く。 「お嫌なようには見えませんが、他に何か問題でも?」 呼吸に苦しみながらも彼女は彼を睨む。 「言われなければ分からないと言う事も、あるのですよ」 熟したように赤く膨らんだ所に軽く指を絡ませる。彼女がまた短く声を上げる。巡る感覚に体が小さく震える。何度か言い掛けては止め、そして漸く彼女は言葉を発する。 「――――痛い」 息を整えながら次の言葉を探す。 「前にも言った、筈だ。急に――――熱が上がると、体が追い付かない。外に出て行けない。肌の、裏側に張り付いて、刺すように――――焼かれるように、痛む。まるで――――焼けた、鉄を押し当てられるように」 最後の言葉に彼はたじろぐ。皮肉を込めて彼女が笑う。 「分かっていてやった癖に、その顔は何だ?」 身を起こそうとして果たせず、早々に諦めて彼女は彼を手で招く。彼女の言葉の名残にまだ躊躇いつつ彼は身を寄せる。伸ばした手で彼の頬に触れる。 「やり過ごし方は知っている。その情けない顔に免じて今回だけは許してやっても良い。だが次にやったら今度こそ頭の中身を全部引き摺り出してやるからな」 唇を重ねる。触れ合っただけですぐに離される。 「いや、寧ろ照準は貴様の三本目の脚に定めた方が良いかもしれんな」 その思い付きが気に入ったらしくいかにも楽しげに笑う。仕方なく彼も苦笑する。 確かに、と、今更のように彼は思う。彼女の肌はただ滑らかなだけだ。掌に吸い付くようなしなやかさを返しはしていない。彼を取り巻く熱さとは裏腹に冷静に彼を見据えているかのようにも思える。そこから彼は抜け出す。完全にではなく、その名残を惜しめる程度の所で留まる。一瞬、苦さが彼の頭を横切る。振り切ってまた彼女の中に身を進める。確かに、彼女の見せる色合いは異なっている。 「引き延ばすな。却って、辛い」 彼女が告げる。黙ったまま彼は彼女を見詰める。乾いた額に静かに口付ける。訝しげに首を傾げる彼女の右の目蓋にいつものように口付ける。再び頭を掠めた何事かを完全に打ち消して、自らを引き抜きまた突き入れる。その行方も分からぬまま繰り返す。 切れ切れに漏れる声の合間に歯の軋む音が入り混じる。固く目を閉ざしていた彼女の目が、ある瞬間くっきりと見開かれる。彷徨うように両の手が差し伸べられる。 「――――軍曹」 その背に手を差し込んで抱き寄せる。彼女の手も彼の背に回る。その力に同調するかのように彼女も彼を強く締め付ける。それなのに彼女の肌はどこもかしこも驚くほど冷たい。彼女の苦痛が彼を追い詰め、駆り立て、導かれる。 彼の背から彼女の腕が解けて落ちる。彼の肩に預けた額を汗が伝う。背中にも冷たい汗が流れている。肩に掛かる吐息はこれほどに熱いのに何故こんなにも冷たいのだろう、力の抜けた体を横たえながら彼は思う。まるで雨にでも打たれたかのように。 浴室からありったけのタオルを手に戻って来る。されるがままの彼女はどこか遠くを眺めている。全て終わる頃になって漸く寝返りを打つ。手を伸ばして煙草を手にする。 「――――全く」 火を点して吐き捨てるように言う。その手付きがまだ若干覚束ない。 「酷い目にあった」 横目に彼を眺めて笑う。味がしないとこぼしながらも火を消そうとはしない。頭を落として、かざした手の先から上る煙の筋を見送る。 「疲れたと、何度も言っているつもりなのだがな」 背中を撫で下ろす手に胡乱な眼差しを投げる。いつもよりもほんの少し暖かく、ほんの少ししなやかな手触りを彼に伝えている。 「そんな姿を見せつけられたのでは、敵いませんよ」 「誰がした事やら」 勢い良く煙を吐き出して彼女が返す。 「お嫌なら命令なさってみたらいかがですか」 「生憎無駄は極力省く主義でな」 微かな笑みが言葉の端に含まれる。 「従わないと分かっていてわざわざ命令など下してやるのは面倒だ」 何の構えを見せる様子もなく、ただ、文字通り彼を一蹴する。顧みる様子も見られない。鳩尾を押さえた彼が顔を顰める。 「本気で蹴りませんでしたか、今」 「まさか」 「手荒い御命令ですね。ですが、一体どういう意味なのでしょうね」 「それが分からんような奴を副官に持った覚えはないが」 二本目の煙草を手にしたまま、火を点けるでもなくフィルタで箱を叩く、軽い音が一定の調子を刻む。 彼女の体を抱きかかえる。密着した肌はやはりまだ仄かに温かい。首筋から耳朶へ舌を這わせて軽く歯を立てる。応えるように彼女の体が身動ぎする。後ろから回した手で彼女の肌を探る。反応の返る所を丹念に辿りつつ彼の舌は耳朶に絡む。吸い付くようなしなやかさを纏う。吐く息に再び熱がこもる。ただその帯びる色は前には及ばない。柔らかな胸もまた同じようでいて異なる感触を彼に与えているようにさえ思われる。彼の手に応える吐息が甘く彩られる。微かに漏れる声もまた甘く彼の耳に響く。 下肢に手を伸ばして彼女の中へ指を割り込ませる。彼女が身を竦ませて、その事で彼を締め付ける。彼女の背の震えが肌を通して彼に伝わる。 「少し――――いつもと違うような気がするのは私の気のせいでしょうか?」 耳元で囁く。掛かる吐息に彼女が首を竦める。 取り繕うように彼女が答える。 「別に、違いなど――――」 中で蠢く彼の指に言葉が途切れる。声にならない声が切れ切れに零れる。 「そうですか?そうは、見受けられませんが」 寸前まで追い詰めてふとその手を止める。ただ胸に伸びた手は戯れのように弄ぶように這い回る事を止めはしない。その曖昧な感覚すら堪えるように彼女は眉根を寄せる。 「――――分かった、から――――」 吐息の合間から一言だけ答えると後はいつものようにきっちりと口を閉ざす。時折口を開いて閉じ込められた吐息を外へ逃がす。苦笑に似た笑みが彼の口元に浮かぶ。 急に奥まで差し込まれた指に彼女の背が跳ねる。また声が弾けて言葉にならないまま辺りへと散る。足が痙攣するように震える。そして、まるで全ての糸が断ち切れたかのように力が抜けて、彼に完全に背を預ける。ずり落ちそうになる彼女を彼は抱き止める。 「――――だから」 彼に向き直って座った彼女は俯いたまま自分の指を絡ませたり解いたりを繰り返している。言葉を探しては考え、考えてはまた言葉を探す。 「過ぎた、から。過ぎるまでは――――痛覚、だけだが、それを超えてしまえば――――何と言えば良いのだろうな。普通に、と言うか、人並みに、と言うか――――比較対象がないから分からんが。取り敢えず、痛み、ではなくなる」 自分の表現が気に入らないのか彼女は顔を顰める。 「いつもは――――ひとつ越えて次へ行く。――――だから――――次から、というのは――――正直慣れていない」 俯いていても彼女が真っ赤になっているのは見て取れる。それもまた気に入らないらしく不機嫌に彼女は沈黙する。吹き出しそうになるのを堪えながら彼は尋ねる。 「そんな状態でお休みになろうとしていたのですか?」 「だから」 彼女が勢いよく顔を上げる。 「だから早く休みたかったんだ」 「眠れますか?あまり良い条件は整っていないと思われますが」 「寝てしまえば何とかなる」 「無理ですよ。元々あまり良く眠れない性質でいらっしゃるのに」 「貴様もう一度蹴られたいか」 「どうぞ。次は受け止めますから」 彼が軽く受け流す。 「そうしたらそれこそ良くお休みに慣れるような手段を選んで差し上げますよ」 彼女は一瞬目を丸くして彼を眺め、そして彼を見下ろすように笑う。 「どうせ蹴らなくともそうするつもりだろう?」 まだ赤味の差す彼女の顔を眺め、その中でいつもの強さを取り戻した瞳を見詰め、それに魅入られるのを感じながら彼は答える。 「良く御存知で」 まるで時さえもが流れを変えたような、そんな錯覚を起こすほど緩やかに口付けが交わされる。互いを確かめるように舌が触れ合って絡み合い、束の間離れてはまた触れる。緩やかなまま次第に深さを増して、溶け込むように混じり合う。時折応えを失い掛ける彼女を促してはまた絡ませる。背中に回した手は薄く湿り気を帯びた感触を彼に伝えている。淡い瞬きを繰り返す睫毛が彼の視界に微かに入る。 ふと彼女の体が揺らぐ。回しただけの彼の手をすり抜けて崩れる。間を置いて目蓋を上げた彼女が瞳の動きだけで辺りを眺め、僅かに首を傾げる。肌に触れる感触にまた目を閉ざす。その動きに沿って体が微かに震える。穏やかなようでいて違わず開かれていく感覚に彼女の肌は更に熱を帯びる。 影が彼女を覆って、体が重なる。彼が彼女の肌に降りて口付け、制止する間もなくきつく吸い上げる。舌先で辿りつつ、また口付ける。淡い痕が点々と散っていく。その度に上がる声もまた、辺りに散っていく。立てた膝が互いを支えにしようとするかのように重なり合う。肌を伝い下りた彼の手が太腿に掛かってそこに割り込む。幾許かの抵抗は彼の下に惑わされて敢え無く消える。彼は少し身を起こす。手にした彼女の脚を肩にかけてまた沈み込む。誘い込まれるように舌先を差し込む。彼女の声が一際高く上がる。 心地好いほどの熱さが彼を迎え入れる。濡れた音が尾を引いて辺りに滲み込む。途切れる間を失いかけながら彼女の声がそれに応える。舌先を尖らせてその輪郭を辿ると、それに沿うように彼女の腰が揺らめく。更にそれに沿う声は嘆きにも似た響きを聴かせる。赤く姿を現したところまで辿ると僅かな曖昧さを含ませて絡ませる。矢継ぎ早に上がる声の合間に千切れた制止の言葉が入り混じる。そこに彼は舌を擦り付ける。彼女の体が大きく反応を返す。内側から溢れて来るものを受け止め、それを彼女に絡める。含むようにそこに口付け、舌を押し付ける。揺らいだ足が一瞬虚空に留まって、力無く彼の肩に掛かる。 暖かな霧に包まれた朝のように彼女の肌はしっとりと湿り気を帯びている。未だ吐息に混じる声を絶やす事が出来ない彼女に顔を近付ける。彼女が殊更顔を背ける。追いかけても、こちらを向かせようとしても頑なにそれを拒む。 「どうかしましたか?」 分かっていて彼は尋ねる。それを十分理解している彼女が漸く視線だけを投げて寄越す。 「嫌なものは嫌だ」 実に彼女らしく答える。まだ力の戻らない彼女の体ごとこちらを向かせる。勿論初めからそうしても良かったのだが、それもまた分かっていての事だ。 「どうして?――――なかなか良い味ですよ」 逃れられない程度に押さえ付けて、唇を重ねる。すかさず舌を割り込ませて、抵抗する力を失うまでの時間をまた楽しむ。 彼女の表情に微かな影が差しているのに彼は気付く。ふと行き当たった思いについ足を止めてしまったような、曖昧な色合いをそれは示している。聞いてみた方が良いのだろうかと思う間に彼女もまた彼の視線に気付く。 「つまらん感傷だ」 遮られて不自然に表情をなくした目で彼を見上げる。時折これと同じものを彼は彼女の瞳の中に見付ける。彼女自身その意図を忘れてしまっているのではないかと思うほど自然に覆い隠してしまう。彼女が彼女としてあるために身に付けた仕草で。 「結論だけおっしゃられたのでは何の事か分かりませんよ」 彼は尋ねる。彼のためなのか彼女のためなのか時折見分けがつかなくなりながらも。思いを形にする言葉を探して彼女は黙り込む。 「所定は完結した。為すべき事をなして全てを終えた。それだけで良い筈だ。だが、ならば――――これまでの私は何だったのか、と」 「――――地獄へ辿り着いた後に、改めて一人ずつ頭を叩き潰して差し上げますよ。お許しさえ、頂ければ今すぐにでも」 見開いた目を瞬かせながら彼女は彼の言葉を聞く。緩やかにかたどられた笑みが終いまで来る頃には小さく辺りに零れ落ちる。両腕が伸びて彼の首筋に絡む。 「感傷に付き合うな。だが、つくづくしつこい奴だな、貴様は」 「当たり前です。私としては当然の事ですよ」 また笑う彼女を見詰める彼の目に曖昧な影が差す。 彼女の口の端に口付け、手を肌の上に滑らせる。断ち切られた笑みが途切れ、腕を僅かに引き戻す。その行き場に迷う合間に彼は手を下肢に滑らせる。まだ十分に名残を残している事を確かめて彼は彼自身をあてがう。彼女の背を引き寄せて導き入れる。ほんの僅かに示した抵抗も束の間、彼を受け入れる。内からの熱がまるで外から覆いかぶさるように彼女を包む。そのしなやかさを肌越しに味わう。 殆ど彼にしがみつくようにして自らを支えている彼女の背を撫でる。その動きに沿って彼女は背を反らす。露になった彼女の首筋に舌を這わせ、次いで胸へ唇を寄せる。その全てに彼女は応えを返す。開いた唇から、触れ合う肌から、そして彼女の内側から。 軽く重心を移動させて彼女をまた横たえる。奥まで突き上げると彼女の肩が揺れる。居場所を失った腕が少し遅れて落ちる。白一色の中で辺りと隔てる筈の朱に染まった彼女の肌も髪の色さえも何故か溶け込むように映る。僅かに焦点のずれた瞳で見上げる、それがおそらくその作用を促している。しかしそれでも彼は彼女を見付け出す。また彼は彼女の奥へ身を進める。彼女はそれに応える。それは繰り返される。そして一瞬彼は彼女の瞳に捕り込まれる。景色が景色としての姿を失くす。一切が溶け込んで全てではなくなる。どちらがどちらなのか、その在り所が分からなくなる。瞬きの間に拭い去られる。そして彼等が残る。一切が消え去った上に彼と彼女が残る。 「大尉――――?」 彼が呼ぶと彼女は僅かな目の動きでそれに答える。 「何か、ご覧になられましたか――――?」 「何、も――――」 荒い息の合間を縫って彼女は返す。彼は顔を近付けて彼女の目を覗き込む。束の間、見詰め合って更に近付き、どちらからともなく差し出した舌が触れる。静かに絡み合って、唇が重なる。 重ねた体の更に奥を探られて彼女の体が震える。それがまた抜け出す感覚にまた身を震わせる。それに沿って導き出される声が時折乱れて苦しげに息を繋ぐ。徐々に彼に沿う事が出来なくなって、ますます呼吸を乱す。そこに重なる声のひとつが音の位相を変える。ほぼ力を失っていた体を通り抜けた感覚が新たに彼女を戒める。彼を包む内壁もまた彼を戒めようとする。彼はそこから抜け出す。彼女の背が弓なりに反り返る。そこへまた戻る。身を折るようにして彼女の背もまた戻る。引き攣ったままの体が大きく痙攣している。彼を締め出そうとする。彼はそれを止めようとする。高く上がったままの彼女の声が更にそれを止めようとして形を取れず単なる響きとなって辺りを切り裂く。そのひとつが彼の背をも切り裂く。奥深く、行き着けるところまで彼は押し入る。中で一層圧力を増した感覚に彼女は弾かれるように目を見開く。そして中で弾ける。注ぎ込まれる熱さに震えながら閉ざす事を忘れた口から漏れる声は少しずつ途切れて柔らかに色を変える。 不可思議な沈黙が辺りを覆っている。彼女は黙ったまま彼を見つめている。元から持つ冷えた色合いの他は何も伝えて来るものはない。それでいて言葉を掛ける隙を与えようとはしない。正確に言えば彼を見ているのではないのかもしれない。一点を眺める視界に入る時だけ彼に照準を合わせる、そう表現した方が正しいように彼には思える。 呼び掛ける何のきっかけも彼女は与えようとはしない。その沈黙でただ彼を黙らせる。時折必要以上に沈黙を守る性質であったとしても、これでは殴られるなり蹴り出されるなりして貰った方が対応のしようがあるかもしれない。沈黙の中で更にその隙を見付け出そうとする彼の頭に戯言のような思いが過ぎる。勿論、その方が対応のしようがあるという事で、黙ってそうされるつもりはない。 「大尉」 相変わらず隙ひとつない沈黙を彼は押し切る。強制されるほどの強さを持っている訳ではない。一言口火を切ってふと、結局そう仕向けられたのではないかと彼は気付く。そう思えば成程これは彼女の良く用いる手段と似ている。例え今彼女が意図していようといまいといつも通りの手にいつも通りに掛かりに行っただけの事なのだ。 「大尉、いつも申し上げておりますが、何かおっしゃりたい事がおありなら、言っていただけないと何も分かりませんよ」 沈黙が途切れ、辺りの流れが変わる。表情は何も変わらないが、耳まで閉ざしている訳はない。背を壁に預けて座る彼女の手が動く。いつものように手を伸ばし掛けて、いつもと同じ場所にはいない事に気付いて手を止める。彼女の煙草とライターを取って戻ると、それを手渡し、その手の下に灰皿を置く。 「どうぞ」 彼女はまるでその存在に気が付かないかのように虚空を眺め、そして今初めて気付いたかのようにおもむろに火を点ける。漸く瞳が動いて、視線だけで彼を見る。 「―――貴様こそ、何か申し開きはあるか」 煙草を口元に運ぶ。 「申し上げるのは構いませんが、立ち所に殴り倒されるか蹴り出されるかする気が致しますけれどね」 煙を宙に吐き出す。その行方を見送った目がまた彼に向けられる。 「何なら、その全てをたった今してやっても良いのだぞ」 フィルタを噛んだ口の端が笑みの形を作る。 「折角のお申し出ですが、お断りしておきます」 「断る権利があると思うか」 「申し立てる権利くらいはあると思いますね」 そこでふと彼が思案げに少し俯く。 「――――ですが、その危険を冒してでも言ってみたいような気も致しますね」 呆れたように彼を見つめる彼女に笑みを含ませた視線を返す。 「――――聞かんぞ」 一言漏らして彼女は顔を背ける。 「聞かないからな。絶対に、一言だって聞いてやらん」 堪えようとした笑いがつい零れる。それに耳を咎めた彼女がまた目を向ける。顰めた眉が気を変えて上がる。いつものように彼を見下ろす。彼がその眼差しを受け止める。彼の目は彼女を映して、彼女の目は彼を映して、辺りよりほんの少し冷ややかに混ざり合う。 |
- to be continued... - |
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うっかり「end」で結ぶとこだったわー♪続くっぽいのよね!続くんでしたよねっっ!!否!是非続いて欲しいと願いを込めて「to be continued...」で結ばせて頂きました。テヘ♪ そんな訳で、寝技に持ち込んでしまえば大尉にはまず勝ち目はありませんね。そうですね。もう、軍曹があり得ない程チョーシぶっこいてるんですが問題ありません…!!!!むしろもっとやってと願わずにはいられません。 「2R目は敏感になっちゃうからダメなの…」的なお言葉をモジモジとおっしゃる大尉の何と可愛らしい事か…!人差し指と人差し指をこう…うりうりさせながらおっしゃってるんですよねっっ♪(それもう挑発以外の何者でも…) でもって、キスマークつけまくった軍曹は後で拗ね拗ねの大尉に怒られると。(お約束) ステキ軍曹×大尉小説御馳走様でございます♪ |